「お子さんが二人もいたら、さすがに車がないと不便でしょう?」東京で生まれ育って40年。
7歳と3歳のやんちゃな息子たちを持つ父親として、この言葉を何度かけられたかわかりません。
確かに、「マイホーム購入=ミニバン購入」というのは、子育てファミリーの王道セットかもしれません。
しかし、我が家はあえて**「車を持たない」**という選択を続けています。
それは単に節約のためだけではありません。
(都心の持ち家で駐車場がないという事情もありますが。)
この地域で駐車場を借りれば月額2〜3万円、年間で24〜36万円もの固定費が飛んでいきます。
でも、それ以上に大きな理由は、「タクシーと電動自転車を組み合わせた方が、圧倒的にQOL(生活の質)が高い」という結論に達したからです。
実際、私の周りでも、駐車場付きの戸建てに住んでいるのにも関わらず、あえて車を持たない同世代の友人が増えています。
この記事では、カーシェアすらほとんど使わず、あえて「タクシー」を主軸に置く我が家の移動戦略についてお話しします。
子育て真っ最中の私たちが実践する、東京という都市の「新しい歩き方」を包み隠さずお伝えします。
「所有」のコストを「移動」の質に転換する
毎週末タクシーで遠出してもお釣りがくる!?
まず、現実的なコストの話をしましょう。
私が住むエリアで駐車場を借りると、相場は月額25,000円〜30,000円です。
これに車両代、保険、税金、ガソリン代を加えると、車を「置いておくだけ」で年間約80〜100万円の固定費が消えていきます。
私はこの固定費を、変動費としての**「タクシー代」**に全振りすることにしました。
例えば、家族4人で東京ディズニーランドへ行く場合。 電車だと乗り換えや混雑で子供がぐずり、到着前に親が疲弊してしまいます。
しかし、都内の自宅から定額タクシーを使えば、片道約9,000円、高速を使って30分程度でエントランスの目の前まで到着します。 「往復18,000円?高い!」と思われるかもしれません。(※帰りだけタクシーを使うこともあります。)
車の維持費が月額換算で約7〜8万円かかることを考えれば、毎週末タクシーで遠出してもお釣りがくる計算です。
「運転手付きのプライベート車」という発想
自家用車の場合、運転手(私か妻)は疲れていても運転しなければなりませんし、現地に着けば駐車場探しという労働が待っています。
一方、タクシーなら移動中に子供の世話もできるし、夫婦で会話もできる。
帰りは遊び疲れた子供たちが寝てしまっても、家の前まで送り届けてくれます。
私たちは車を持たないことで、「運転という労働」と「維持管理の手間」から解放され、「家族との時間」を買っているのです。
なぜカーシェアではなく「タクシー」なのか
「たまに乗るならカーシェアでいいのでは?」という意見もあります。確かにコストは安いです。
しかし、未就学児がいる家庭にとって、カーシェアは意外とハードルが高いのが現実です。
- カーシェアの「見えないコスト」 チャイルドシート問題:毎回持参して取り付ける手間は想像以上に重労働です。
- 予約の競合:天気の良い週末や連休など、使いたい時に空いていないことが多い。
その点、現代の東京は「GO」や「S.RIDE」などの配車アプリを使えば、数分で家の前までタクシーが来ます。
チャイルドシートの義務免除(タクシー等のバス・タクシーは道路交通法上、使用義務が免除されていますが、安全配慮は必要)という法的側面もありますが、短距離や都市部移動において、「乗り捨て可能」なタクシーの機動力は最強です。
※タクシーでチャイルドシート(ジュニアシート)の着用が免除されている理由は、**道路交通法施行令(第26条の3の2)という法律で明確に「免除規定」**が定められているからです。
日常の足は「最強の相棒」電動アシスト自転車
もちろん、我が家の移動手段がすべてタクシーというわけではありません。
日常の半径3〜5km圏内は、完全に電動アシスト自転車の出番です。妻と私それぞれに1台ずつ、そしてチャイルドトレーラーを組み合わせた「我が家仕様のモビリティセット」が、東京での車なし育児を支えています。
都市計画や都市工学の分野でも、**東京のような高密度都市では「5km以内の移動は自動車より自転車のほうがドア・ツー・ドアで速い」**ことが指摘されています。信号待ちや渋滞、駐車場探しの時間まで含めてトータルで見ると、自転車のほうが圧倒的に効率的です。
電動アシスト自転車+チャイルドトレーラー「動く秘密基地」
我が家の具体的な使い分けはこんな感じです。
そして、うちでは電動アシスト自転車は単なる「移動のための道具」ではなく、完全に“遊び道具”の一つになっています。
愛用しているチャイルドトレーラーを自転車に連結すると、そこはもう子どもたち専用の小さな個室です。
トレーラーの中では、
- タブレットで動画を見たり
- 兄弟で並んでお昼寝したり
- 友達を乗せておしゃべりしたり
と、ただの移動時間が、そのまま子どもたちの「遊び時間」「くつろぎ時間」に変わります。
子どもたちにとっては「動く秘密基地」のような空間になっています。
週末には、この電動アシスト自転車+チャイルドトレーラーにデイキャンプ道具一式を積み込んで、近くの大きな公園へ。
タープとチェア、ちょっとした焚き火台やクッカーを持って、ピクニックやデイキャンプを楽しみます。
車がなくても、都内には自転車で行ける良い場所がたくさんあります。
もちろん、日々の実用品としてのメリットも大きいです。
- 保育園の送り迎えや習い事
- スーパーやドラッグストアでのまとめ買い
- 図書館や公園への移動
チャイルドトレーラーがあるおかげで、大きな荷物も一度でたくさん運べるので、正直、近場の買い物に関しては車よりも便利だと感じる場面が多いです。さらに助かっているのが雨の日。
レインカバー付きのチャイルドトレーラーなら、中の子どもたちは濡れずに快適に移動できます。
大人だけカッパを着ればいいので、わざわざ「雨だからタクシーに切り替えよう」と考える必要もない場面が増えました。
こんなふうに、我が家にとって電動アシスト自転車とチャイルドトレーラーは、 「近距離移動の足」+「子どもの遊び場」+「荷物運搬カーゴ」 という三役をこなす、最強の相棒になっています。
「車なし家族」で挑戦した東京〜静岡キャンプの話
我が家の「車なし生活」を象徴する出来事が、コロナ禍に挑戦した東京〜静岡のスーツケースキャンプです。行き先は、静岡県裾野市の大野路ファミリーキャンプ場。もちろん、車はなし。移動手段はすべて公共交通+タクシーというフルコースでした。
自宅最寄り駅から静岡へ
東京駅から新幹線で静岡方面へ 最寄りとして選んだのは。事前にGoogleマップとにらめっこして決めた「岩波駅」 岩波駅からタクシーでキャンプ場まで キャンプ道具は、約25kgのスーツケース1つに集約。そこにリュックサックを背負い、片腕には当時2歳の長男を抱っこ、。もう片方の手でスーツケースをガラガラ引くという、今振り返ってもなかなか無茶なスタイルでしたが、そのときは「どこまで車なしでやれるか」というワクワクの方が勝っていました。
「運転しないキャンプ」の想像以上の快適さ
この旅で強く感じたのは「運転をしないキャンプ」は想像以上に楽だということです。道中の新幹線でビールを飲みながら移動できる 渋滞やルート、駐車場の心配を一切しなくていい 子どもと一緒に車窓を眺めて「旅行そのもの」を純粋に楽しめる 気づけば「もう着いたの?」という感覚で現地に到着し、行き帰りの“運転疲れがゼロ”という快適さを心から実感しました。
タクシー前提キャンプで痛感した「事前確認の大事さ」 一方で、タクシー前提でキャンプに行く場合の「落とし穴」も身をもって体験しました。 地方では、 「タクシー乗り場のない駅=そもそも辿り着けない」 というケースも普通にありえます。
岩波駅は幸いタクシーを呼べるエリアでしたが、 どのタクシー会社が どこまで迎えに来てくれるのか キャンプ場の“目の前”まで入ってくれるのか、近くの道路やコンビニまでなのか こうした条件は事前に確認しておかないと危険だと痛感しました。
岩波駅からタクシーに乗ったあとは、運転手さんにお願いして地元のスーパーに寄り道。
地元の魚や肉、野菜を買い込んで、いよいよキャンプ場へ。
受付の人も想定外だった「タクシーキャンプ」 初めての泊まりキャンプで少し緊張しながら受付に行くと、 開口一番、こう聞かれました。「お車でお越しですか?」 何も考えずに 「はい」 と答えたのですが、後から思えば、受付の方はまさか「タクシーでキャンプに来ている」とは思っていなかったはずです。当日は山らしい小雨まじりの天気。
それでも、日頃からデイキャンプやタープ設営をしていたおかげで、 子どもたちを先にワンポールテントの中で休ませる 自分は外でタープとテントを一気に設営 という段取りで、なんとか形にすることができました。しばらくすると、受付のスタッフさんが小走りでサイトまでやってきて、こう言われました。
「先ほど“車でお越しですか”と伺ったんですが、ご自身の車ではなくタクシーですよね? でしたら“徒歩の方”と同じ料金で大丈夫なので、差額をお返しします」 どうやら、 自家用車で来る人用の料金 徒歩・公共交通機関で来る人用の料金 が分かれていたようで、「タクシーで来る客」は完全に想定外だったようです。
わざわざ雨の中、返金に来てくれた、その気遣いも含めて、とても印象に残っています。
焚き火とご当地食材、家族で共有した静かな時間 キャンプ自体は本当に順調でした。
焚き火台に火を起こし 地元スーパーで買った魚や肉、野菜をゆっくり焼き 子どもたちと焚き火を囲みながら、静かに話をする 「車で来て、着いてからクタクタ」という感覚が一切ないので、到着直後からずっと気持ちに余裕があるのが印象的でした。
この時間は、今でも家族の大事な思い出として残っています。
帰り道で発覚した「車なしキャンプの落とし穴」 問題は、帰り道でした。
帰りは「タクシーが来ない?」
リュックを背負い 子どもたちを連れて 「さあ、あとはタクシーを呼んで駅に戻るだけだ」とタクシー会社に電話をすると、返ってきたのは予想外のひと言でした。
「そのキャンプ場は、当社のエリア外なんです」
「えっ、エリア外? 駅まで8.2kmもあるのに?」
一瞬、頭が真っ白になりました。 仕方なくスーツケースを引きながら歩きはじめ、最寄りのコンビニまで約450m移動。半ばダメ元でもう一度同じタクシー会社に電話してみると「はい、その場所でしたらエリア内ですね。お迎えに行けますよ」まさかのOK。
たった数百メートル歩いただけで「エリア外」が「エリア内」に変わるという、ちょっとした“奇跡”のような出来事でしたが、冷静に考えれば完全なリサーチ不足です。
このとき痛感した教訓は、次の2つです。
「どのタクシー会社が、どの地点まで迎えに来てくれるのか」を事前に確認しておくこと キャンプ場“そのもの”まで行けるのか、それとも近くの大通りやコンビニまでなのか、条件を細かく把握しておくことでした。
一度きりの「スーツケースキャンプ」がくれたもの
この東京〜静岡スーツケースキャンプは、 体験としては大成功だけれど、現実的には課題も多くて、結局この一回きりになりました。
ただ、それでもこのチャレンジから得たものは大きかったと感じています。
「車なしでもここまでできるんだ」という自信 タクシーと公共交通機関、そしてスーツケースを組み合わせた、新しいキャンプスタイルの可能性 子どもたちと一緒に味わった、ちょっとした“冒険感” これは、車を持たない我が家だからこそ生まれた体験でした。
もし普通にミニバンを持っていたら、きっと当たり前のように「東名高速でキャンプ場まで直行」していたと思います。
あの無茶なスーツケースキャンプは、「車がない」という制約があったからこそ生まれた、小さな挑戦と、大きな思い出でした。
「うちにはうちの正解がある」ということ
実際に体験した人|今田イマオさん
あの「スーツケースキャンプ」の帰り道、タクシーを呼ぶために必死で歩いた450mの道のり。
今でも妻と「あの時は本当に焦ったよね」と笑い話になります。
もし我が家に車があったら、あのキャンプはもっとスムーズで快適だったでしょう。
でも、「車があったら生まれなかった思い出」が、今の私たち家族の絆を深めてくれています。
誤解のないように言っておきたいのですが、私は「車を持つこと自体が悪い」とは全く思っていません。
実際、都内に住む私の父も弟も車を所有しています。
「週末しか乗らないのに、もったいなくない?」と聞いたことがあります。すると弟は苦笑いしながら、「そうなんだよな。でも、いざというときないと困るし…」と答えました。
正直なところ、私から見ると弟のような「週末ドライバー」には、維持費の無駄を感じてしまいます。
年間80万円あれば、必要なときにレンタカーを20回以上借りられますし、タクシーだって相当な距離を使えます。大切なのは、「周りが持っているから」「当たり前だから」ではなく、自分たちの生活スタイルに本当に合っているかどうかを冷静に考えることだと思いました。








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